● 思い込みによる判断 ●
経験則による判断や偏見は投資のプロセスに多大な影響を与える。
投資家は信念を持って売買していて、ひとたび信念を持つとそれを変えようとしない。手に入る情報のすべてを考慮して相場をやっていると思っている。しかし、それは最も役に立つ情報を淘汰して捨てているかもしれない。
カール・ポパーは、「理論の正しさを証明しようと努力するのはなく、その誤りを見つけようとすることから知識は進歩する」と指摘している。それが正しいとすれば、相場についての自分の思い込みや仮定に気づき、その誤りを証明しようとするほど、うまく儲けられることになる。
● システム作りにかかわる偏見 ●
□ 代表しているという思い込み
あるものが何かを代表しているとき、そのものずばりだと思い込む。日足バーチャートやお気に入りの指標が相場であると信じきる。ところがそれは、大量の情報を表示する手っ取り早い方法にすぎない。
□ 信頼できるという思い込み
正確ではないかもしれないものを正確だと信じる。たとえば、検証に使う過去のデータや、生の相場データに間違いはつきものである。それを想定していなければ、売買の判断を何度も誤ることになる。
□ ロトの偏見
相場を支配したいという思いから仕掛けを重視する。仕掛ける前なら相場を「自在に」できるからだ。ところがいったん仕掛けると、後は相場の勝手に動く。売買の黄金律「損失は少なく抑えよ。利益は大きく育てろ」は仕掛けではなく、手仕舞いの問題である。
□ 少数の法則
パターンなど存在しないところにパターンがあると思ってしまう。選び抜いた少数の例を見て、そのパターンに意味があると信じ込む。これに次の保守主義が結びつくと、かなり危険だ。
□ 保守主義
(選ばれた少しばかりの例をもとにして)いったんパターンを見つけて、それがうまくいくと確信すると、その反証となるものは全力で排除する。
□ ランダムさについての偏見
相場はランダムであり、何度も天井と底があって簡単に売買できると思う傾向がある。だが相場はランダムではない。値の分布を見ると、相場は長期にわたって無限に変動することや、ベル曲線を描いた後には、統計学者のいう「長い平坦な線」が続くとわかる。たとえランダムな相場でも、同じ調子が長く続くこともある。だから最高値や底値を狙うのは、最も難しい売買の仕方なのだ。
□ 「理解しなければ」という思い
相場に秩序を作り出して、あれこれ理屈をこじつける。そのためにかえって相場の流れに乗れない。現実を見ないで、自分が見たいと思うように見てしまうからである。
● システムの検証に影響する偏見 ●
□ 自由度への思い入れ
システムを最適にしたいと思う。そして過去の状況に合致するようにデータをいじればいじるほど、売買がよくわかったような気になる。そんなことより、自分の売買方針をよく理解することだ。過去の検証は最小限でよい。
□ 追認の過ち
システムを作るとき、現実の相場ではまだ出ていないはずのデータを不注意にも使ってしまうことがある。たとえば、ある日の終値を使って分析し、終値になる前に清算すると、テスト上はとてもうまくいく。
□ 不十分な防御
ポジションサイズや手仕舞い戦略が売買の要だと思っていない。そのために、ひとつの売買に多くの資金をつぎ込みすぎる。
● 売買の仕方にまつわる偏見 ●
□ ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)
負けが続くと勝つ確率が高くなり、勝ち続けの後は負ける確率が上がると信じている。
□ 利益は控えめに、損失は大胆に
利益は素早く確定したがり、損失には猶予を与える。それで正しいことをしているように錯覚するが、実際には「利益を少なく抑えて、損失を大きく育てている」。
□ この売買で勝たなければという思い
それはほかのすべての偏見の元凶である。正しくあることと、儲かることは別物だ。
● 参考書籍 ●
「魔術師たちの心理学 ― トレードで生計を立てる秘訣と心構え」
バン・K・タープ (著), Van K Tharp (著), 上野 惠子 (翻訳), 萩原 重夫 (翻訳), 戸張 義雄 (翻訳)
