● システムの期待値 ●
□期待値とは?
資金1ドルにつき、(複数回の売買を)平均していくら儲かるかをあらわすもの。
平均するうと1ドル当たりいくらの儲けを期待できるかをあらわすもの。
□期待値の計算方法
期待値=(PWxAW)−(PLxAL)
PW:勝つ確率 PL:負けの確率 AW:平均利益 AL:平均損失
期待値=Σ(i=1ton)(PWixAWi)−Σ(i=1ton)(PLixALi)
期待値は、プラスの期待値の合計からマイナスの期待値の合計を引くと得られる。
□機会と期待値
期待値とは、ゲームを繰り返した結果1ドルにつきいくら儲かるかである。
たくさんゲームをするほど期待値を達成できる見込みが高まる。
(例)
ゲーム1:期待値20セントx売買機会60回=12ドル
ゲーム2:期待値78セントx売買機会12回=9.36ドル
期待値は大きくても、売買機会が少ないと儲けが小さくなる。
(例)
勝率90%で平均利益が275ドル、負け率が10%でへいきんん損失が2700ドルのシステム。
期待値=(0.9x275)−(0.1x2700)=−22.5
勝率は高くても期待値はマイナスになる。
90%は勝てるが、最終的に資金を全部なくすシステムとはこういうものである。
すべての投資で勝ちたいという心理が強く働く。そのために全体として利益を上げることを無視したり、利益を最大化できなくなる。相場を支配したいと思うあまり、相場に支配されてしまう。
使える売買方法は、利益と勝率の組み合わせで決めるべき。
□期待値とR倍数
相場では正確な勝率や負け率はわからない。いくら勝つか負けるかも厳密にはわからない。
しかし過去のデータでテストすれば、大体の見当がつく。またリアルタイムの売買データのサンプルもたくさんある。
いずれかのデータを使えば、自分のシステムのおよその期待値を知ることができる。
そのためには個々の売買のリスク・リワード・レシオと発生頻度を調べる必要がある。それをきちんとやることで、自分の方法論の性質がもっとよく見えてくる。
売買のリスク・リワード・レシオを「R倍数」でとらえる。
R:初期リスク
ある売買のR倍数を計算するには、ポジションを清算したときのポイント数を初期リスクで割ればよい。
(例)
500ドルのリスクで1500ドル儲けたら、R倍数は3である。
過去のシミュレーションや、自分のこれまでの売買結果のR倍数が期待値を構成する。
R倍数の性質によって自分の売買方法の期待値が決まる。
またそれによって、売買目的にかなった資金管理のあり方を見極めることもできる。
R倍数の性質とは、個々のR倍数の大きさや発生頻度、発生順序を意味している。
健全なシステムを持てない人が多い理由
@売買の損益分布を見越していない
A資金をつぎ込みすぎるか足りなすぎる
@Aのいずれか、あるいは両方
システムの勝率がわかっていれば、1000回売買すれば連続して負ける回数は最大何回かを見積もることはできる。しかし、「実際」の損失額は決してわからない。
□相場の期待値
<期待値を計算する理由>
期待値があれば、時間やポジションサイジング、値の異なる物の売買が含まれているなどの要素に左右されずにシステムを比較できるから。
(期待値の問題例)
あるシステムを2年間使っている。
これまで103回売買して、負け60回(58.3%)と勝ち43回(41.7%)
サンプルシステムの2年間の売買結果
勝ち売買(平均利益$1259.23)
$23,17,4,12,32,8,6,489,532,611,431,563,459,531,476,561,499,521,
458,479,532,618,1141,995,1217,1014,832,984,956,1131,1217,897,
1517,1684,1501,1654,1464,1701,2551,2545,2366,4652,14256
負け売買(平均損失$721.73)
$31,18,16,6,23,15,427,491,532,488,612,556,511,483,477,456,532,
521,460,530,477,607,478,517,429,489,512,521,499,527,501,506,665,
612,432,564,479,519,671,1218,871,1132,988,1015,978,1123,1311,976,
1213,1011,993,876,1245,1043,1412,1611,3221,1211,945,1721
純利益=54137ドル、総損失=43304ドル、純利益=10833ドル
期待値を計算すると
期待値=(0.147x1259.23ドル)−(0.583x721.73ドル)=104.33ドル
この期待値の数字は、1ドルあたりの期待値に換算していない。1ドルあたりで計算することが大事。
それから、どんな種類の結果で期待値が構成されているかを知ることも大切。
これを表の損益グループ分けで示した。便宜上、最小損失に近い数字の500ドルの幅で分類してある。
表 損益のグループ分け
| 利益 |
損失 |
| 金額幅 |
回数 |
総利益 |
金額幅 |
回数 |
総損失 |
| スクラッチ |
7 |
$112 |
スクラッチ |
6 |
$109 |
| $500
|
15 |
$7,760 |
$500 |
33 |
$17,081 |
| $1,000
|
10 |
$10,384 |
$1,000 |
17 |
$18,149 |
| $1,500
|
6 |
$9,521 |
$1,500 |
3 |
$4,744 |
| $2,500
|
3 |
$7,462 |
$3,000 |
1 |
$3,211 |
| $4,500
|
1 |
$4,652 |
|
|
|
| $14,000
|
1 |
$14,256 |
|
|
|
| 合計 |
|
$54,147 |
合計 |
|
$43,304 |
|
|
|
|
|
|
スクラッチとは、何らかの理由ですぐ清算してしまったか、あるいは損失ゼロにするためにストップを引き上げて清算した売買のこと。
上の表より損益グループの分布を見ると、最小損失(スクラッチを除く)には特別な意味が含まれているとわかる。
このケースでは、最小損失は500ドル。
利益と損失を最小損失で割ると、ペイオフ(収益性)が出る。この計算結果を以下の表にまとめた。
表 最小リスク金額(500ドルと仮定)で表した損益グループ
| 利益 |
損失 |
| ペイオフ |
確率 |
プラスの
期待値 |
ペイオフ |
確率 |
マイナスの
期待値 |
| 1対1 |
15/90=0.167 |
$7,760 |
1対1 |
33/90=0.367 |
$17,081 |
| 2対1 |
10/90=0.111 |
$10,384 |
2対1 |
17/90=0.189 |
$18,149 |
| 3対1 |
6/90=0.067 |
$9,521 |
3対1 |
3/90=0.033 |
$4,744 |
| 5対1 |
3/90=0.033 |
$7,462 |
6対1 |
1/90=0.011 |
$3,211 |
| 9対1 |
1/90=0.011 |
$4,652 |
|
|
|
| 28対1 |
1/90=0.011 |
$14,256 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
このシステムは、スクラッチ(損益なし)の売買を除くと勝率が40%(36/90)である。
合計利益が約1万ドルだから、それは1回の売買、つまり14256ドルの儲けをだした売買のおかげである。
また、もし1回の売買で出した3221ドルの損失がなければ、利益は40%増になる。
売買は綿密に検証しなければならない。
大勝ちできたのはなぜか?この先そんな売買をもっと増やせるか?そんな売買ができる確率は本当に1.1%か?もっと上げる方法はないだろうか?
損失はどうかというと、3221ドルの損を出した原因は何だろう?そういった損の可能性は1.1%で間違いないか?それとも、もっと高い(あるいは低い)可能性もあるのか?心理的な問題のために失敗したのかもしれない。だとすれば、それを避けるためにはこれからどうしたらいいのか?
損益グループの表を用いると1ドルあたりの期待値を出せる。
プラスの期待値の方程式=(0.167x1)+(0.111x2)+(0.067x3)+(0.033x5)+(0.011x9)+(0.011x28)=1.16ドル
勝ち売買の総期待値は1.16ドルとなる。
マイナスの期待値の方程式=(0.367x1)+(0.189x2)+(0.033x3)+(0.011x6)=0.91ドル
負け売買の総期待値は0.91ドルとなる。
1ドルあたりの合計期待値は、プラスの総期待値からマイナスの総期待値を引くと、1.16ドル-0.91ドル=0.25ドルとなる。
このシステムの1ドルあたりの期待値は25セントということになる。
● まとめ ●
システムができたら次の手順で期待値を計算してみる。そして、たくさんあるであろう問題点を検証する。
1.システムの総合的な期待値を算出する。
今使っているシステムや、すでにテスト済みのものがあれば、総利益を売買回数で割ればよい。
これは、まだ1ドル当たりの期待値ではないことに注意。
2.ポジションサイジングの影響を排除するために、最低売買単位または100株単位でみる。
3.最小損失額に応じて、100ドルまたは500ドルの金額幅で利益と損失を分類する。
最小損失額は、どのあたりを損切りにするかに関係する。それがシステムの1Rレベルである。この段階ではシステムの期待値を評価しているだけなので、改善しようとはしないこと。
4.金額幅による分類をもとに、「最小損失額」を1単位として確率のマトリックスを作成する。
これで1ドル当たりの期待値がわかる。
5.その確率表から期待値を計算する。
6.少なくとも100回の売買で、1ドル当たり50セント超えの期待値であれば立派である。
その辺りが長期のシステムの目安だ。期待値がもっと低くても売買頻度が多ければ十分な成果をあげられる。
7.期待値を達成するために必要な売買回数を知る。
8.結果を考察する。
マトリックスの分布から何が読み取れるのか?
利益の大きい勝ち売買を増やすには、システムをどう変えればよいのか?
コスト高な負け売買を減らすにはどうすべきか?
(注意事項)
1.期待値と勝てる確率は別物である。
すべての売買で勝ちたいと思うのは人の常である。そのために確率の高い仕掛けのシステムに傾きがちになる。しかし、そのようなシステムには大損の可能性もあり、期待値がマイナスになることもよくある。だからリスクは常に期待値に沿って決めること。
2.プラスの期待値が高くても、やはり損をすることはある。
1回に大金をつぎこみすぎて負けると、立て直すのは難しい。
● 参考書籍 ●

「魔術師たちの心理学 ― トレードで生計を立てる秘訣と心構え」
バン・K・タープ (著), Van K Tharp (著), 上野 惠子 (翻訳), 萩原 重夫 (翻訳), 戸張 義雄 (翻訳)
|