● システムのパフォーマンス測定 ●
システムの検証は、ヒストリカルデータに基づいて実行される。ここでの秘訣は、データを余すことなく活用して、評価測定結果の先見性を最大限に高めることである。
代表的な測定項目としては、以下のものがあげられる。
・純利益(総損益、純益総額)
・最大ドローダウン
・1トレードの平均損益
・最大の勝ちトレードと最大の負けトレード
・総利益と総損失
・プロフィット・ファクター
・勝ちトレードの平均利益と負けトレードの平均損失
・(勝ち/負け)トレード回数と1トレードの平均日数
・最大連続勝ちトレードと最大連続負けトレードと勝率
・Kレシオ
・シャープ・レシオ
● 純利益(総損益、純益総額) ●
あるデータ領域についてシステムが生み出した結果。勝ちトレード、負けトレード、スリッページ・手数料を全部合わせた値。当然、システムの有効性を示す指標となるが、それだけつかんでいればよい、というわけではない。
いかに強固に構築されたシステムでも、厳密な検証を行ったとしても、トレーディング戦略で想定されるパフォーマンスを評価する場合には、純利益はほとんど役に立たない。
この理由には二面性があり、単独の市場でトレードを行うのか、複数の市場とシステムトレードを行い、ポートフォリオを構成するのかによる。
単独の市場について該当することは、ポートフォリオを構成した場合にも該当する。
● 最大ドローダウン(最大DD) ●
口座残高がいったん減少したあと再び増加して以前の最高額を超えた場合に、過去の最高資産額からその後の最低額を引いた額をいう(当然、最終的な金額は事後的に決まる)。
最大ドローダウンとは、過去の全データにおける最悪の減少額であり、損益曲線のピークからの最大の落ち込み幅をいう。
ドローダウン時期とは、一般的な捉え方によれば、以前の最高額の時点から、最終的にその最高額が回復した時点までの期間である。
大きな最大ドローダウンを持つシステムは、小さい最大ドローダウンを持つシステムと比べてリスクが高く、望ましくないとされる。
最大ドローダウンは、必要な運用額と、そのシステムを使ったトレードを行うかどうかについての心理的な目安を与えてくれる。
● 1トレードの平均損益 ●
システムを使ってトレードを仕掛ける前に考慮すべき最も重要なことのひとつは、1トレードの平均損益を見積もっておくことである。
金額ベースのヒストリカルデータのみに基づいている限り、基本的には、総損益についていえることは1トレードの平均損益についてもいえる。
しかし、1トレードの平均損益について考える場合、マーケットの価格水準が大きくかけ離れていたときのトレードに「はるかにさかのぼって」しまうと、そのトレードの価格が平均損益の数字に過大な影響を与えてしまうということに注意しなければならない。
● 最大の勝ちトレードと最大の負けトレード ●
資金管理の観点からすると、最大の負けトレードの情報はドローダウンよりはるかに重要である。
ただし、よく使われているほかの多くの手段と同様に、最大の勝ちトレードと最大の負けトレードは、それらが起こった時点とマーケットが明確になったうえで用いなければ、本質的には何の意味も持たない。
このことを理解していれば、最大の負けトレードを使って、簡単な資金管理戦略を構築できる。
● 総利益と総損失 ●
総利益も総損失も、総損益と同様の影響を受けやすい。
トレンドが発生しやすいマーケットの場合、総利益や総損失の数値はマーケットの価格変動によって変わってくる。
ポートフォリオでは、マーケットの価格水準が高いほど、ポートフォリオの総利益や総損失の数値に与える影響も大きくなる。
しかし、利益や損失が十分な期間にわたって広く分散されており、両者の関係がその期間を通じてほぼ同じ状態であれば、総利益や総損失は、パフォーマンスを評価する初期の段階では、貴重な情報を提供してくれる。
この情報はプロフィット・ファクターから得ることができる。
● プロフィット・ファクター ●
プロフィット・ファクターは、単純に総利益を総損失で割ることで計算される。
その相対は、1ドルの損失に対して、いくらの利益を上げることができたかを示している。
利益と損失が同じペースで変動しており、期間を通じて均等に分散されているかぎりプロフィット・ファクターは有効に機能し、マーケットにトレンドが存在するかどうかは問題とならない。
プロフィット・ファクターの数値が高いほど、優れたシステムであることは確かであるが、より重要なのは、プロフィット・ファクターの数値の高さよりもその堅実さを見極めること、つまり、プロフィット・ファクターが将来にわたってどの程度実用に耐え、異なるマーケット状況で使用できるかということがポイントとなる。
多くのシステム開発会社やトレーディングのエキスパートたちは、過去のデータに基づいた検証の結果、プロフィット・ファクターが3以下のシステムを使ってトレードを行うべきではないと考えている。
将来にわたって有効に機能する堅牢なトレーディングシステムを構築するには、基盤となるロジックが強固かつシンプルなもので、トレーディングのルールも同様にシンプルかつ可能なかぎり少なくしておく必要がある。さらに、総利益と総損失がトレーディング期間を通じて均等に分散され、互いに関連性が高いものでなければならない。
もし、以上のことが達成できるのであれば、プロフィット・ファクターが1.5、あるいはそれ以下のシステムを使っても利益をあげることができるであろう。
● 勝ちトレードの平均利益と負けトレードの平均損失 ●
勝ちトレードの平均利益と負けトレードの平均損失を正しく扱うことができれば、総利益と総損失に関して貴重な情報を提供してくれる。
利用方法としては、たとえば、現在トレードがドローダウンを生じており、自分の価値トレードの平均利益と負けトレードの平均損失、およびその起こる頻度がわかっていれば、ドローダウンを埋めて運用額の新規更新を達成するのに必要な最小トレーディング回数(時間)を算出することができる。
● (勝ち/負け)トレード回数と1トレードの平均日数 ●
トレード回数はとても重要な情報であり、システムが自分のトレードに適しているかどうかを判断する最初のカギとなるものである。
より重要なのは、システムがどの程度の時間、マーケットにとどまろうとするかである。
これは、マーケットにとどまっている時間の長さがリスクの大きさに比例するからである。
ある一定の利益を得るのにマーケットで費やす時間が短いほど、成功の可能性も高まる。
● 最大連続勝ちトレードと最大連続負けトレードと勝率 ●
連続勝ちトレードを最大限にし、同じく連続負けトレードを最小限に抑えて、できるだけ勝率を高くすべきである。
適切に構築されたシステムでは、勝ちトレード回数は比較的多いが、その額は小さく、何よりもイライラさせられるものである。
システムを検証する際には、そのシステムが同じような結果をもたらすトレードを連続して生み出す傾向があるかどうかをチェックすることが極めて重要である。もしそのような傾向があれば、そのシステムやマーケットには、まだ発見されていない貴重な情報が隠されている。もしこの傾向がなくならないようなら、そのシステムを使って資金管理の戦略を構築する際、このことを記憶にとどめておく必要がある。
プロフィット・ファクターと併用すれば、パフォーマンスサマリーから直ちに得ることのできる唯一の評価方法は勝率であり、システムの将来のパフォーマンスを推定する場合に役に立つ。
ただし、基盤となるロジックが確固としたもので、システムが堅牢なものであることが前提となる。この数値を可能なかぎり高く保ち、満足のいくように戦略を実行すべきであるのはいうまでもないことであるが、プロフィット・ファクターに関しては、それがシステムのトレーディング能力になり、資金管理戦略を選択した場合は、高い数値より、もっと堅牢な数値の方が望ましい。
ドローダウンから脱却するためのトレード数Nの計算式。
N=INT(DDA/(XxAW−(1−X)xAL))+1
DDA=ドローダウンの額
X=勝率、0から1の範囲
AW=勝ちトレードの平均利益
AL=負けトレードの平均損失
(例)勝ちトレードの平均利益700ドル、負けトレードの平均損失300ドル、勝率45%、2500ドルのドローダウンから脱却するために必要なトレード数は、、、
N=INT(2500/(700x0.45-(1-0.55)x300))+1=17
17回となる。
さらに、トレードの平均期間が5日で、マーケットで費やす時間が33%とすると、赤字から脱却するためには、週末と休日を除いて250営業日(17x5/0.33)かかる計算となる。
これは、ドローダウンから脱却するには、一見「多少のトレーディングでうまく稼げばいい」ように思えたが、実はほぼ1年に及ぶ期間が必要であることを示している。
● Kレシオ ●
Kレシオは、システム性能を測定するために開発された統計量である。
Kレシオを計算するには、損益曲線(時間とともに累積した利益)を取り上げ、通常の最小二乗による回帰を実行する。それは、基本的に損益曲線に適合するトレンド・ラインである。
Kレシオは、最も適合するトレンドラインの傾きの重要度を測定することにより、以下に示すような滑らかで正の傾きを持つ損益曲線を探すためのものである。
Kレシオ=(回帰線の傾きの標準偏差)x(観測数の平方根)
Kレシオは、リスクと報酬を比較するものである。2.0以上の値は安定した滑らかで正の傾きを持つ損益曲線を示す一方、-2.0以下の値は望ましくないマイナスの成績を表す。ゼロに近い値は、システムの損益が損益分岐点の近くにあるか、利益の現れ方がとても不規則であることのどちらか一方、もしくは両方を意味する。
● シャープ・レシオ ●
シャープ・レシオはノーベル経済学賞を受賞したウィリアム・シャープ博士によって開発された。Kレシオと同様、シャープ・レシオはリスクと報酬を比較するものである。
月次収益の平均を月次収益の標準偏差で割ることにより計算される。結果は、単位をもたない性能尺度である。よいシステムは0.5以上の値を示すことになる。
月次シャープ・レシオから年次シャープ・レシオを算出するには、月次シャープ・レシオに12の平方根である3.46を掛ければよい。シャープ・レシオは、Kレシオを補完するものとして好ましいものである。
Kレシオとシャープ・レシオは、最悪のシナリオだけでなく、利益の現れ方の一貫性も評価している。
● 参考書籍 ●

「トレーディングシステム入門 ― 仕掛ける前が勝負の分かれ目」トーマス・ストリズマン著

「トレーディングシステム徹底比較」(ラーズ ケストナー)
日本市場の全銘柄の検証結果付き