● 手仕舞いの仕方 ●
□手仕舞いとは?
一度市場にポジションを取ると、いつどのように手仕舞いするのかわからない。損切りをするにしても利益を確定するにしても、手仕舞いは市場で収益を得るためのカギを握るところである。
実際取引を行う黄金率としては、「損は小さく切り、利益を伸ばせ」ということだ。
トレーディングシステムを持っていると言える人とは、マーケット参入時にいつ撤退するのかを知っている人である。
最悪の場合の撤退は、投資資金を確保するためのものだが、事前に決定しておくべきものである。
さらに、どのように利益を得て、さらに利益を増やし続けるか、見通しを持っていなければならない。
人々は手仕舞いには市場をコントロールする力がないので、良い手仕舞いをすることに力を注いでいない。
しかし、手仕舞いは実際には何かをコントロールしている。それらは、利益を得るか、損失を出すかをコントロールしているし、その利益や損失がどの程度になるかもコントロールしている。
以上のことを考えれば、ほとんどの人がもっと学習しなければならない課題である。
● ストップ ●
□プロティクティブ・ストップ
・プロテクティブ・ストップとは赤信号のようなものだ。無視して通り過ぎることもできる。しかし安全とはいえない。
プロテクティブ・ストップは、マーケットで「推測」されないところ、またノイズの範囲外に設定するようにした方がよい。
<プロテクティブストップの主要な機能>
@今のポジションで許容できる最大の損失額を設定する(R)。
A利益を予測する基準を設定する。
・トレーダーあるいは投資家として重要なことは、当初のリスクであるRの倍数の利益を得る戦略を立案することである。
・ストップを設定するときに、ノイズを許容することを考える。
これはディブ・ストップ、ATRの数倍のストップ、MAEを決定し、それよりも大きいストップを用いることである。
(用語説明)
*ノイズ
株価が1ポイントか2ポイント動いたとしても、少数のマーケットメーカーが「値付け」をしているのか、商いが交錯しているのかわからない。商いが交錯しているとしても、継続していくかはわからない。マーケットで行われる毎日の取引には、たいていノイズがあると考えた方がよい。
*ディブ・ストップ
ATRの標準偏差を用いたストップ。
過去30日間のATRの標準偏差を計算する。
「ATR+1標準偏差+10%の補正係数」を第1段階のストップとする。
「ATR+2標準偏差+20%の補正係数」を次の値幅のストップとする。
(補足)
もし通常の価格分布のもとにあれば、価格変化の±1標準偏差の範囲内に価格の67%が含まれる。±2標準偏差では97%が含まれる。マーケットの価格は正規分布をしておらず右側に偏っているため、この誤差を勘案して標準偏差を修正する必要がある。最初の標準偏差では10%、次の標準偏差では20%の調整が必要である。
*ATRの数倍のストップ
毎日の取引はATR(真の値幅の平均)で表される。過去10日間の取引の平均値(すなわち10日移動平均)を取れば、毎日のノイズの近似値を得ることができる。
ATRの10日移動平均に2.7から3.4の間の定数を掛けると、ノイズを十分回避したストップの金額を得ることができる。これは大半のトレンドフォロー派にとって適切なストップである。
*MAE(最悪値洗い損)
トレード期間の全体で見て、日中の価格変動を考慮したポジションに逆行する最悪の価格変動のこと。
大幅なストップを入れて成功したトレードのMAEは、ある一定の価格よりも悪くなることはほとんどない。良い取引はわれわれの目論見から大幅にはずれることはめったにない。
マーケットが変化したときにこの価格を定期的にチェックすると、当初考えていたよりも、より値幅の小さいストップを入れられる。このメリットは、多少回数が増加するかもしれないが、損失が小さくなり、勝ちトレードでより大きなR倍数を得られることにある。
幅の小さいストップの欠点は、システムの信頼度を損なうことにある。利益を得るために数多くの取引をしなければならない。小さな損失が何度も発生するのを許容できないのであれば、幅の小さいストップは失敗の原因になる。
また、幅の小さいストップは取引コストを大幅に増加する。マーケットに入り浸りになっていると、取引コストのために利益が飛んでしまう。
・幅の小さいストップはR倍率を上げて利益を大きくし、損失を最小限とする。一方、信頼度を小さくし、取引コストを引き上げる大きな欠点がある。その結果、しっかりした仕掛けの計画がある場合のみに幅の小さいストップを使うべきといってよい。
・このほかのタイプのストップとしては金額ベースのストップ、比率によるストップ、ボラティリティ・ストップ、チャネル・ブレイクアウト・ストップ、移動平均ストップ、支持線・抵抗線ストップ、時間ストップ、自己裁量のストップなどがある。それぞれメリットがあり、自分のトレーディングシステムに適したものを選ぶべき。
(用語説明)
*金額ベースのストップ
金額ベースのストップは心理的な安心感を得るためのもので、取引上いくらまで損失を許容するかを想定してストップを入れておく。
テクニカルな利点としては、第1にそのようなストップは他人に予想されないこと、第2にストップの額がMAEを超えている場合、結果的にすぐれたストップとなることである。
*比率によるストップ
仕掛けのときの価格から一定のパーセントだけ押し目をつけたところにストップを入れる方法。
この損切りの方式がMAE分析などに基づいているのであれば構わない。しかし、思いつきの数字を設定することは、ストップを入れた結果、大きな利益の可能性を逃してしまうことにつながる。
*ボラティリティ・ストップ
ボラティリティ・ストップとは、ボラティリティが、ある程度のマーケットのノイズを表しているという考え方に基づいている。ATRの数倍でストップを入れるならば(例えば3倍のATR)、マーケットの直接のノイズに惑わされない良い方法だろう。
*チャネル・ブレイクアウトと移動平均ストップ
仕掛けと同様にストップにも使える。このタイプのストップはATRやMAEに基づくストップほど良くない。
チャネル・ブレイクアウトのストップは、最悪時のプロテクティブ・ストップであるのと同時に利食い法でもあるため、利益の多くを吐き出してしまうといった大きな欠点がある。
*支持線および抵抗線によるストップ
チャートを見て支持線と抵抗線を確認する。ストップはこれらのレベルの一番上か一番下に置かれる。
ストップの設定に不安を感じる場合は、ストップの価格に定数を加えることもできる。ゆえに、仕掛け値の下にある支持レベルよりも定数値の下にストップを置くことができる。
*時間ストップ
一定期間内に利益を得ることができなければ(あるいは一定以上の利益を上げなければ)、ポジションを解消すること。
時間ストップを使うかどうかは個人の判断による。
長期投資家で、以前から持っていた相場の動きが突然起きたときにマーケットに戻れないのであるならば、時間ストップは使うべきではない。しかし、短期トレーダーであれば、時間ストップは何よりの武器になる。
時間ストップを使う前に、自分の方法論のなかで効果の確認を行う。そして、損を縮小するのに効果的と思うなら、システムに取り入れる。
● 利食い法 ●
□利食いの背景にある目的
手仕舞いに関しては、解決すべき問題が多く存在する。
最悪の事態が発生しなければ(損切りに引っかからなければ)、自分で用意したシステムに基づくことで最大限の利益が得られ、損失は最小限にとどめられる。これが可能なのは、自分で作った手仕舞いだけである。
システムを設計する際には、利益に対するリスクをどのように管理したいのかということ、利食いを利用して利益を最大にすることを念頭に置くべきである。
最初に置く損切りのほかに、手仕舞いには多くの種類がある。
・損失を生じるが初期リスクを軽減する手仕舞い。
・利益を最大にする手仕舞い。
・あまり多くの金額をマーケットに戻さないで済む手仕舞い。
・心理的手仕舞い。
この分類には、ある程度重複する点がある。それぞれを追及する際、システムにどのように適合できるかを考えることである。手仕舞いの戦略のほとんどは、特定のシステム目標に対して信じられないほどうまく適合する。
□損失を生じるが初期リスクを軽減する手仕舞い
・時間ストップ
利益が出なくなったことを教えてくれるサイン。たとえば「現在のポジションで利益がでなければ、2日後に仕切り注文を出して撤退せよ」と指令を出すもののこと。このような手仕舞いは、損失を生じさせることもあるが、最悪の事態は避けてくれる。
・トレイリングストップ
一種のアルゴリズムに従って、定期的に調整がなされるもの。
トレイリングストップについて重要な点は、手仕舞いのアルゴリズムが自分に有利な方に動くように絶えず手仕舞いを調整することにある。その動きは利益を生まないかもしれないが、損失の可能性を減少してくれるはずだ。
トレイリングストップの成果を検証することによって、このトレイリングストップを実行したいのかどうかを入念に検討する必要がある。
□利益を最大限にする手仕舞い
利益を最大にする(=ポジションを持ち続ける)ためには、含み益の一部をマーケットに喜んで返さなければならない。
実際、システム設計の皮肉な部分というのは、利益を最大にしたければ、すでに蓄積した利益のかなりの部分を返す心積もりがなければないらないという点である。
・トレイリングストップ
トレイリングストップは大きな利益を得るのに役立つ可能性を持っているが、常に利益の一部を戻すようにも働く。
1)ボラティリティ・トレイリングストップ
過去10日間の実際の平均ボラティリティの2.7倍〜3.4倍の間の数が良いとされている。
2)金額ベースのトレイリングストップ
たとえば1500ドルといった数値を決め、前日の終値に従って、その金額でトレイリングストップを維持する。
金額ベースのストップは、合理的根拠があれば優れた手法である。
3)チャネル・ブレイクアウト・トレイリングストップ
過去何日間の最高値・最安値で撤退したいと決める。
たとえば、買いポジションでは過去20日間の安値を下回ったときに売りを決断し、売りポジションでは過去20日間の最高値を上回ったときに買いを決断することになる。
価格が自分に有利なほうに動くにつれて、この数字も有利な方向に絶えず調整される。
4)移動平均トレイリングストップ
価格が特定の方向へ移動している場合、移動平均がゆっくりと価格の後を追うため、ストップとして利用することができる。しかし、その移動平均に含まれる期間の数値を自分で決める必要がある。
移動平均には、単純や指数、ずらし型、適応型など、多くの種類がある。すべきことは、目標達成に最も役立つストップをひとつ、もしくは複数見つけることだけである。
・プロフィット・リトレイスメント・ストップ
利益を増大させるために、獲得した利益を一定の比率で戻さねばならないことを前提としている。
許容できる戻し額の数値を割り当て、それをシステムの一部とする。
□含み益を返し過ぎないようにする手仕舞い
目標を達成できれば利食いをするか、もしくは、より幅の狭いストップを設定する。
・プロフィット・リトレイスメント・エグジット
一定比率の利益だけを戻し、重要な時期(たとえば、顧客への報告もしくは利益目標など)に到達した後には、その比率を小さくするもの。
・逆行する大きなボラティリティ
自分に不利に働く大きなボラティリティで手仕舞う。ボラティリティ・ブレイクアウト・システム。
ATR(真の値幅の平均)から自分に不利な方向に働く場合(たとえば毎日の平均の2倍のような)に手仕舞うと決める。
・パラボリック・ストップ
パラボリック曲線は、先のマーケットの安値からスタートし、上昇マーケットに対し加速要素を含んでいる。
マーケットがトレンドを示すと、パラボリック曲線は価格に接近する。つまり、利益の固定に大きな働きをする。
取引の初期においては実際の価格より相当離れている。パラボリック・ストップは価格に近くなりすぎることがあり、市場のトレンドが継続している間にストップが執行される恐れがある。
□心理的手仕舞い
市場がどんな動きをしようと、市場が大きく上昇しているとしても資金を失う可能性はある。
これには、身体的にあるいは心理的に優れない場合、ストレスが大きい場合、離婚を経験した場合、子供が誕生した場合、あるいは引越しなどが考えられる。このようなときには、市場での損失を被る可能性は大きくなる。したがって、その場合には心理的手仕舞いを利用し、市場から撤退した方がよい。
● 参考書籍 ●
「魔術師たちの心理学 ― トレードで生計を立てる秘訣と心構え」バン・K・タープ (著), Van K Tharp (著), 上野 惠子 (翻訳), 萩原 重夫 (翻訳), 戸張 義雄 (翻訳)
